スペシャライズドというブランドの自転車に、かれこれ23年乗っている。
東京の仙川という街に一人暮らしをしていた独身時代、デザイナーやイラストレーターと一緒に借りていた中目黒の仕事場(シェアオフィスのはしり?)まで、通勤の足として買ったものだ。2001年のことである。
写真は2005年モデル
今でこそどこでも見かけるが、当時はまだ出始めたばかりの『クロスバイク』。
スポーツ車といえばロードバイクかMTBという時代に、かなり斬新な存在として登場した。
ポジションが気に入らないとグリップを変え、ペダルやサドルを変えてみたりと自分なりのカスタムをしつつ、それはもう楽しく乗っていた。
そうこうしているうちに世の中の自転車ブームは流れ、ピストバイクブームが起こる。
変速機のないシンプルな固定ギアにクロモリの細くて渋いフレーム、人によってはブレーキすらつけていない(違法)、いろいろなものを削ぎ落とした究極の姿。前後で違うホイールなんかを着けた人なんかも現れ、いかにこだわりのカスタムをしてるか合戦も起こり始めていた。
ミーハーな僕は、「かっこいい!買い替えは面倒だけど、僕もあんな感じにしたい!」と安易に乗っかり、
不要なパーツを取り去り、カーボン製のバトンホイール(めっちゃ重い)を意味もなく着けたりしていた。
時間は残酷なもので、そんなピストブームもあっという間に過ぎ去る。
僕は「ちょっとロードバイクが欲しいかも」と思い始めていた。
ここでも僕の「乗り換えるほどではないな…」という謎の思考が脳を支配し、クロスバイクをロード化しようと考えるのである。
しかしそれは『沼』であった……。
クロスバイクとロードバイク、素人目にはハンドルの形状が違うだけに見えるが、実はかなり違う。
「ハンドルの形が違う=変速機もブレーキも違う」
「そもそもフレームの形が違う」
「クロスバイクをロード化するんだったら、買い替えた方が安い」
という結果になる。
どう見ても、買い替え一択である。
そこで納得すればいいものを、「出来るところまでやってみよう」と僕はなぜか思ってしまう。
様々な情報を集め、変速機の種類や組み合わせを調べ、ホイールを変え、なんとなく完成させちゃったのである。
それがこの姿。
そう、保育園送迎号なのだった。月日が流れ、僕は結婚し、『親』という生き物に変わっていたのである。
自転車は変わらないのに。
まずロードである必要がない。いや、育児があるし、今一番ロードバイクから遠い男と言っていい。
なのに、何を思ったか僕は「東京都最速の送迎自転車を作る」ことに没頭していたのである。
おかげで子育て世代にとって超面倒な『送迎』というミッションは、かなり時短できた。
子供を送った後、子供乗せキャリアのついた自転車が車道脇を40km/h近いスピードで走っているのである。
異様な光景だっただろう。
バイクロアで仮装レースにも出ちゃったり(流石に子供乗せサドルは外した)。
そして現在、僕のクロスバイクは今こんな形になっている。
世の中はグラベルブーム。それに乗らない手はない。自転車を買い替えずに。
子供と一緒にレースに出て泥んこになったり
こんな感じでその時代時代のブームに(安易に)乗っかり続ける形で自転車をいじり続け、
結果買い替えるという選択肢がなくなってしまったのである。
おかげで、たいていの故障は直せるし、フレームから組み上げてしまうほどのスキルを身につけてしまった。
しかし僕はいつになったら新しい自転車を買うのだろうか。
あぁ、マウンテンバイクが欲しい(フラグ)。