イラストレーターの浦野周平です。
我が家には雫(しずく)という猫がいます。
7月2日の梅雨の最中、都電の踏切のそばで泣いていた(鳴いていたではなく)のでこの名前になりました。
彼女には血のつながらないお兄さんがいました。
実家に犬がいた関係で根っからの犬派人間だった僕にとって、猫なんてまったく興味のない生き物のひとつでした。
犬よりも愛想も良くなさそうだし、なによりどうやって抱っこすれば良いのかもわからない、液体のような柔軟性の身体。野良猫を撫でたことはあるけれど……程度の存在。
そんな僕が猫と生活を始めたのが今から17年前。
当時僕は、イラストを描く仕事場と家を分けていたんですが、その仕事場のそばに野良猫が多数生息していました。
近所には通称『ねこオバサン』と呼ばれている人が餌やりをやっているらしく、その周辺は猫コミュニティができていたようです。
近くにあったトリミングサロンのスタッフも積極的に保護猫活動をしていたようですし、近所には有名ピアニストの藤子ヘミングさんが住んでいたらしく、彼女も数多くの保護猫と暮らしていたとか。
ある日、昼飯がてら事務所を出たところ、ガリガリのキジトラの子猫がこちらへ向かってきました。
僕と恋人(のちの妻)に愛想を振り撒き、油断すると僕の背中まで登ってきそうな勢い。
「うちはペット不可だから飼えないんだよ〜」と猫に言い聞かせ、どうにかその場をやり過ごそうとしていた時、
「この子お願いできるかしら?なかなか保護できなかった最後の一匹なのよね!」
と声をかけられました。振り返ると例の猫オバサン!
「保護したくてもケージとかないし〜」抵抗を続ける僕でしたが、猫オバサンの冷酷な一言、
「ケージあるから貸してあげる!」
困惑しつつ恋人に助け舟を出してもらおうと目をやると、すでに飼う気満々の眼差し。
そうだった。彼女、猫好きだったんだ……。
この時点で完全に猫飼いへの道が強制的にスタートされてしまったのです。
保護した猫は宗介という名前に。
恋人の好きな本に出てくるキャラクターからつけました。
個人的にペットには人間と同じような名前をつけるのが好きなんです。
実家で飼ってきた犬も「巌」「勲」とか。苗字と並んだときに違和感のない名付けを意識してます。
そんな宗介ですが、実にいい子で飼いやすかった。
猫は皆ツンデレかと思っていたのに、出かけようとすると寂しそうにする。出先から帰って来れば犬のように喜ぶ。
普段は静かに寝てるし、しなくてもいいのにイラストの徹夜作業をする僕の横でウトウトしながら付き添ってくれる。
ペット不可物件では流石に飼えないので家探しを始めた僕らは、結局思った通りの家が見つからず家を建てることに。そして家を建てた事がきっかけで結婚、妻は猫の首輪ブランド「CONOHA」を展開するなど、宗介が来たことによってライフステージが音をたてて高速回転しはじめました。
雫を保護したあともしっかりお兄ちゃんとしてお世話をし、
僕らに子供が生まれたら遊び相手になり、喧嘩の仲裁もしてくれたり。
ほんと「来てくれてありがとう」以外の言葉が見つからない。
そんな宗介も歳には勝てず、昨年癌のため16歳にして旅立っていってしまいました。
雫の誕生日(保護した日)に重ならないようにか、1日前の7/1に。
最後まで優しい兄でした。また生まれ変わって保護できますように。
猫と暮らすようになってから取材を受けることや、猫イラストを描く機会も増えました。
ちなみにサムネイルはそんな宗介をイメージして描いたイラスト「エイリニャン」。某有名映画のオマージュです。
これは過去にギャラリールモンドにて開かれた「CAT POWER展」のために描いたもの。
他の年の展示にはこんなのも描いてます。猫の体の「液体っぽさ」を表現しています。
このくらい伸びますよね?猫。
そんな『CAT POWER展』、僕は参加しませんが、今年も開催されるので是非。イラストレーターの『今』を感じられる展覧会です。しかも売上の30%が動物愛護団体へ寄付されます。
不幸な猫が一匹でも減りますように〜。
「CAT POWER 2024」at ギャラリールモンド
2024/7/30日(火)〜8/11(日)
12:00 – 20:00
日曜日は17時まで 月曜定休日