サイトウユウスケさんはほぼ同世代のイラストレーターなので、リアルタイムで作品を見る機会が多かった。当時から感じていたのは、描く線の細やかさ、人物描写の巧みさ、そして何よりもイラストから伝わる独特の空気感。雨上がりの陽射しが降り注ぐような爽やかさというか。この空気感は、他のイラストレーターにはなかなか真似できないものだと思う。
仕事を続ける中で、横目でそんな彼の仕事を見ながら「うまいなぁ~」と尊敬の念を抱いていた。ご本人は会ってみると物腰柔らかだし、オシャレだし猫飼いだし、「彼に悪いところなんてあるんだろうか?」とすら思ってしまう。
そんなサイトウさんが漫画を描き始めたと聞いたときは驚いた。
題材は、彼が以前から描いてきたシリーズ作品「Chuck AND THE Girl」。
メガネをかけた活発な女の子と、彼女の猫との一連の作品だ。
このシリーズが僕はとても好きで、何度か個展にも足を運んだことがあった。
そんなシリーズが漫画になるとあればそりゃあ読む。読む一択。
ただ、彼の繊細なタッチで漫画を描くのはさぞ大変だろうし、なによりイラストレーションと漫画では求められる技術がまったく違う。僕にも漫画家の友人がいるけれども、その制作過程をみると「こりゃあ僕には無理だわ…」と思わされたことがある。
そんな中、いざサイトウさんの連載「Chuck AND THE Girl」が始まってみると、そこにはしっかりと「漫画版・サイトウユウスケの世界」が広がっていた。あの空気感、あの躍動感、あの可愛らしさ。「イラストレーターが描いた」という枕詞はもはや不要で、自然に引き込まれるストーリー。「あぁ、あの作品にストーリーが加わるとこんなにもキラキラと輝き出すんだ」と感動した。
漫画ゆえにいつもの作品より工数を抑えて描いているけれど、そこがまた絶妙なリズムを生み出している。「やっぱり上手い人は描き分けても上手いんだな…」と改めて思わされる(そして自分の技量に落ち込む…)。最後にはきちんと涙腺を刺激されるストーリーに、「単行本がでたら買おう…」と決めていた。
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